「音読が大事」はみんな知っている。でも、なぜ続けても伸びないのか?

英語の勉強法を調べると、必ず「音読が大事」と書いてあります。でも、毎日音読しているのに英語力が上がらない、という声も多い。この矛盾の答えが、2025年の脳科学研究で初めて明らかになりました。

問題は「音読そのもの」ではなく、「音読をどのタイミングでやるか」だったのです。

世界初の発見:音読のタイミングで、脳への効果が変わる

📄 研究概要

早稲田大学・東京大学・東北大学・富山大学・玉川大学の共同研究チームは、日本人英語学習者80名(40ペア)を対象に、語彙練習のタイミングが脳に与える影響を計測しました。脳活動の計測にはfNIRS(機能的近赤外分光法)という装置を使用。実際に英語でペアと会話している最中の脳の動きをリアルタイムで観察するという、世界初の試みです。

論文名:「Timing matters for interactive task-based learning」
掲載誌:Studies in Second Language Acquisition(Cambridge University Press)、2025年10月6日

実験では、学習者を2つのグループに分けました。片方は英語で会話タスクをやるに単語を練習し、もう片方は会話タスクをやったに同じ単語を練習する、というシンプルな違いです。

すると、驚くべき違いが現れました。

会話の「前」に音読・語彙練習
📚 記憶に定着する

1週間後のテストでも、単語を正確に使えた。「正確な知識」を身につけたいときに有効。

会話の「後」に音読・語彙練習
🧠 脳がシンクロする

対話中に相手との脳活動の同調(シンクロ)が高まった。「伝える力」を育てたいときに有効。

同じ「音読」でも、やるタイミングによって脳への働きかけはまったく違う。

「脳のシンクロ」とは何か?

研究で特に注目されたのが「Inter-Brain Synchronization(IBS)」という現象です。

これは簡単にいうと、2人が会話しているとき、お互いの脳活動のパターンが似てくる現象です。脳が「シンクロ」している状態は、コミュニケーションが円滑に進んでいることを示す神経科学的な指標として注目されています。

今回の研究で分かったのは、会話の「後」に音読・語彙練習をしたグループほど、このシンクロが強く起きていたということ。つまり、「まず自分で話してみて、後から言葉を整理する」という流れが、コミュニケーション能力そのものを高めるのです。

🔍 さらに重要な発見

研究では、「脳のシンクロが高いペアほど、語彙の学習効果も高かった」という関連性も明らかになりました。相手の意図を読もうとすること、伝わったか確認しようとすること——そういった社会的なやりとりそのものが、語彙を脳に定着させる力を持っているということです。

これは英語学習に何を意味するのか

この研究が示す実践的なヒントは、目的によって練習のタイミングを変えることです。

単語・表現を正確に覚えたいなら → 会話・実践の「前」に音読

新しい単語や言い回しを覚えるときは、まず声に出して練習してから実際に使う、という順番が効果的。試験対策や新しいフレーズを習得する段階には特に有効です。

「話す力」「伝える力」を伸ばしたいなら → 実践の「後」に音読

会話や音声を聞いた後に、同じ内容を声に出して繰り返す——これがシャドーイングや音読練習の理想的な流れです。「まず本物の英語に触れ、その後に自分の声で追いかける」という順番が、脳への定着を最大化します。

シャドーイングがなぜこれほど効果的なのか、脳科学が証明した

この研究結果は、シャドーイングという練習法の有効性を脳科学的に裏付けるものでもあります。

シャドーイングとは、英語の音声を聞きながら、ほぼ同時に声に出して真似する練習法です。最初に本物の英語音声(インプット)に触れ、その直後に自分の声で繰り返す(アウトプット)——この流れは、今回の研究が「脳のシンクロを高める」と証明した「実践の後に音読」の構造と完全に一致しています。

つまり、シャドーイングは脳科学的に理にかなった練習法だと言えるのです。

💡 ENGLIXでシャドーイングをやる理由

ENGLIXのシャドーイング練習ツールでは、①まず英語音声を聞いて意味を確認し、②0.6倍速でゆっくり繰り返し声に出し、③自分の音声を録音してお手本と聞き比べる、という3ステップで練習できます。これはまさに「聞いて→声に出して→確認する」という、脳への定着を最大化するサイクルです。

研究者のコメント(原文より)

早稲田大学の鈴木祐一准教授は、この研究についてこう述べています。

「練習のタイミング一つで、学習効果だけでなく、相手とのコミュニケーション中の脳の働きまで変わるという発見が、多くの教師や学習者にとって効果的な学びのヒントになればと願っています。」

まとめ:音読は「量」より「タイミング」

今回の研究で明らかになったことを整理すると、次のようになります。

音読はやればいいというものではなく、目的に合わせてタイミングを選ぶことが大切です。正確な知識を覚えたいなら実践の前、話す力を高めたいなら実践の後、そしてどちらの目的でも、脳のシンクロが高いほど学習効果が上がる——これが最新の脳科学が示した答えです。

英語学習に「なんとなく音読」をしていた方は、今日から「目的を決めて、タイミングを選ぶ」音読に変えてみてください。

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参考文献・出典
鈴木祐一、野澤孝之、内原卓海ほか(2025)「Timing matters for interactive task-based learning: Effects of vocabulary practice on learning multiword expressions and neural synchronization」Studies in Second Language Acquisition, Cambridge University Press.
DOI: 10.1017/S0272263125101290

プレスリリース(東京大学先端科学技術研究センター):英単語の練習、脳科学で最適なタイミングを探る(2025年10月6日)